MKU's View

経営戦略論・組織論を研究しているMKUのブログ。 書評やウェブ上の気になった記事などを載せていきたい。 私自身の思考トレーニングの側面もあるので、まとまりの良さよりも、ちょっとした「引っかかり」を中心に投稿を行っていきたいと思っている。


Saturday, October 07, 2006

ゴーン改革の代償

日産はカルロス・ゴーンの一連の改革によって、劇的な復活を遂げた。ゴーンが行ったとされる改革はいくつかあるが、それらは、資産(株式等)売却による資本コストの圧縮と、系列関係の見直しによる仕入れコストの低減、クロスファンクショナルチームによる改革の推進等である。こうした様々な改革は、具体的な数値を必達目標(コミットメント)を示しながら推進された。特に、ゴーン改革の総仕上げとも言うべき中期経営計画「日産180」は、全世界で100万台の増産、営業利益率8%、有利子負債0が掲げられ達成された。
この一連の改革は内外で高い評価を受けているが、現在の日産の状況を見ると、その改革の揺り戻しとも言うべき現象が起きている。
1つは、販売不振で、これは特に日産180の「1」の達成(つまり100万台増産)のために、期限までに台数の稼げる小型車を多数リリースした結果、新車種の発売が続かなくなってしまったためと言われている。
もう1つの問題点は、財務的な改善を目指した結果、環境技術分野での立ち後れが目立っている点である。10月2日付日経新聞朝刊「ゴーン改革 成功の代償」によると、採算の見通しの立たないハイブリッド車の発売が見送られてしまい、その結果、エコカー開発に出遅れる結果になっているとのことである。
これらの結果、日産の長期的な成長戦略は不透明なものになりつつあるのかもしれない。そうした危惧を匂わせる現象として、日経産業新聞10月4日記事「日産強まる「軽」頼み」によると、日産自動車は自社ユーザーをつなぎ止めるために軽自動車が活用されているとしている一方で、それら軽自動車は三菱自動車など他社からのOEMであり、現在の販売不振に対して、他社から調達したリソースで対応をしている状況にある、という指摘がある。
ゴーン改革は、日産を倒産の危機から救う上で必要であったが、現在の状況を見ると、表面上の問題として、特に新車種の継続的なリリースなどの製品開発体制に問題が生じてきているように思える。心配なのは、これが一時的な改革の反動で収まらず、長期的な不振へと再び転落することである。
日本企業は特にその組織的な特性から、戦略転換が上手くできないという問題を抱えやすいと言われている。ゴーンはそうした問題に対して、外部から来た人間という立場を活用し、また、日産社内の危機感と上手く結びつけながら、組織の戦略転換を成し遂げた。しかし、ゴーンの関わりが弱まったあとの日産では、数値目標を具体的に掲げるわけでもなく、旧来のやり方は踏襲されなかったように見える。明確な目標を掲げ、それに向かって組織の諸活動を方向付けるというやり方故に可能になったゴーン以後の日産の体制で、目標の不明確さが生じれば、組織の合理性の基盤が揺るぎかねない。このままの状況では、かつての方向の定まらない日産に逆戻りする可能性もあるのではないかと心配される。

Tuesday, October 03, 2006

「ローソン高齢者対応店を拡大」

10月3日の日経新聞朝刊に「ローソン 高齢者対応店を拡大 既存コンビニ改装加速」との記事があった。
同記事によると、高齢者対応コンビニとは「野菜や果物の品揃えや休憩スペースの設置などが特徴」の店舗で、孫と一緒の来店も可能なように玩具やキャラクターグッズも扱っている。当初予定では、全店舗の2割程度を高齢者向けに改装する予定だったが、好調のため階層は3-4割まで増やすとのこと。
これは高齢者がワンストップで必要な商品を購入できるようにするねらいがあると考えられる。今後、こうした店舗をコンビニ各社も増やしていく可能性は考えられる。
日本社会が迎えつつある高齢化という人口統計的な大幅な変動は、コンビニ業界に限らず様々な産業に影響を与えると言える。例えば、ディズニーランドなどのアミューズメントパークは、旧来は若年層をターゲットにしていたが、このセグメントの人口が減少している現状では、同じターゲットを対象として業績を維持することは徐々に困難になってきている。そうなった場合に、どのようにサービスを新たに再構築するかが問われている。
ローソンの場合は、コンビニという業態とあまり移動を積極的にしたくない老年層という2者のマッチングが出来たが故に、「高齢者向け店舗」という新しいくくりに基づいた形態が好調なのであろう。しかし、当然のことながら、若者以外が全員高齢者になるわけではないため、老人でも若者でもない層は当然存在するし、その中でも多様なセグメンテーションが必要になってくるであろう。
また、先ほど言及したテーマパークに関しても、旧来のターゲットセグメントをさらに深耕するという方法もあり、事実、一回の来園での顧客単価を上げるために付属設備を充実させるなどの取り組みは、かなり前から取り組まれている。逆に言えば、シニア向けのディズニーランドというのはなかなか難しいという現状もあるのであろう。
人口の高齢化は避けられない現象であるが、高齢化社会に対してどのように対処するか、企業によって対応が異なってくるであろう。今後も高齢化社会に対する企業の対応が興味深いテーマとして注目していきたい。